群馬、高崎市に建つ『群馬音楽センター』(1961)は、鉄筋コンクリートによる大空間実現のため、折版構造が採用されています。深い陰影を湛えて、完成からまもなく50年、荒々しいながらもなぜかコンクリート打放し面が、ここでは表情がやさしいのです。空間が年齢を越えて生き生きとしていました。設計者のA.レーモンド(1888~1976)は、チェコで生まれたアメリカ人です。戦前と、戦後再来日して日本の建築界に大きな足跡をのこしています。同時に彼に関しては、先の大戦が生んだ、簡単に語ることのできない評価もありますが‥‥。
もう一つ、JR高崎駅からほど近いところに旧井上邸(高崎哲学堂)があります。ゼネコン井上工業社長・井上房一郎の住居です。麻布にあったレーモンド邸に惚れこんだ井上が、許可をもらってそっくりコピーしたものなのです。経済性が考慮されたのでしょうか、丸太と合板が多用された、一見質素な造りになっています。本当の豊かさとは何かを考えさせられた作品です。
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