2011年8月29日

日本と西洋の住宅文化の接点/ネクサスワールド(福岡県)

 福岡(博多湾)東部の埋立地に仕掛けられた街、『ネクサスワールド』(1991)が忽然と姿をあらわして、20年以上が経過しました。磯崎新(1931~)のもとに参加した建築家は、R.コールハース、S.ホール、M.マック、石山修武、C.ポルザンパルク、O.トォスケなど錚々たるメンバーです。完成当時訪れた時には、内部も見ることができました。住居形式は様々で、各建築家たちの思想、哲学までが発露されていて、その内容に目を見張らされたものです。当時はバブル期、大変な高額家賃に驚いた記憶があります。あらためて街区を歩いてみましたが、楽しい、嬉しくなります。入居者が喜び、設計者も楽しんだ建築。これらを「バブル建築」として括られるとしたら、私はバブル建築を大いに評価したいと思うのです。

2011年8月22日

所謂 ”デザインホテル” の先駆け/ホテル イル・パラッツォ(福岡県)

 福岡は建築がとても元気な町です。この日はA.ロッシ(1931~1997)が設計した『ホテル イル・パラッツォ』に宿泊です。このホテルで最も重要だったのは、その立地だったと言われます。地元の人なら「なぜ春吉に?」と首を傾げる地域に建ちます。既成観念にとらわれず、街を変えていこうと考えたことが窺えるのです。ファサードは赤色のトラバーチンに、緑色をした複数のツバが水平に走ります。広場を経て8本の円柱を潜ってロビーへ。内田繁(1943~)のインテリアにもイタリアがいっぱいです。夜、川向こうの中洲の屋台を巡っての息抜きも、どうぞ。

2011年8月8日

建築と音楽が響き合う/ラ・トゥーレット修道院(フランス)

  『ラ・トゥーレット修道院』(1960)は、ル・コルビュジエ(1887~1965)晩年の作品です。木立の中、長いアプローチルートを経て、エントランスは3階に設けられ、礼拝堂は2階に、4,5階が僧房となっています。ここでの各部のデザイン表現は、暗さから明るさへの変化などでも抑制を効かせ謹厳さにあふれています。ほとんど同時進行していた、「ロンシャン教会堂」に見られる彫塑的な展開はあえて避けて、キリスト教の教えの高みへ近づこうとしているかのようです。彼は、人の心を呼び込む力を持ちました。構成の誠実な堅固さも持ちました。
 細部では北面以外に多用されている、不規則なリズムを刻む細い見付けの方立が、この建物のデザインを強く特徴づけています。

2011年8月1日

「垂直の街」を実現/マルセイユのユニテ(フランス)

 マルセイユの『ユニテ・ダビタシオン』(1952)はル・コルビュジエ(1887~1965)初の、都市計画的要素が盛り込まれた高層集合住宅です。訪れた人は1階を貫くピロティーの太く逞しい柱の列に圧倒されるでしょう。外部の住戸階にはカラフルな彩色が施されていて、ファサードが豊かなものになっています。住戸は吹抜けを持ったメゾネットタイプです。屋上の計画も有機的言語があふれていて、コルブ最盛期の執念が炸裂!しています。