2012年9月24日

日本の新しい住宅様式/聴竹居(京都)









 京都大崎山の閑静な高台に建つ『聴竹居』(1928)は、建築家・藤井厚二(1888~1938)が和洋融合のスタイルを結実させた、彼5つめの実験住宅です。敷地が広い。訪れた季節は秋、紅葉が盛りでした。坂を上るアプローチからの端正な佇まいが目に飛び込みます。建物は環境工学的考えから、通風、断熱、日射対策などに新しい工夫が凝らされていて、平面、内外意匠にも旧来の和風住宅という枠から抜け出ているのです。先進的な様式の理想を自身で考え、実践を通して貫いた藤井の生涯そのものなのでしょう。

2012年9月10日

丘の上に輝く望徳/日本二十六聖人記念館(長崎県)

 JR・長崎駅から急な坂道を10分ほど歩くと、 西坂公園です。現在は整備されているこの公園も、400年以上前には、26人のキリシタンが尊い命を絶たれた悲劇の地だったとは‥‥。ここに建つ『日本二十六聖人記念館』(1962)は、建築家 今井兼次(1895~1987)が全身全霊を傾けて取り組み完成させた、殉教者達のためのモニュメントです。建設に協力、協働した一般人達の祈りと精神までも、実に美しく溶け合っているように見えます。昭和30年代後半、モダニズム全盛の時代に今井はこの建築でその枠を超えました。