2012年10月29日

沖縄民家の模範生/中村家住宅(沖縄県)

 沖縄本島中部、北中城村の『中村家住宅』(18世紀中期)は南面した傾斜地に建ちます。この家は古い日本の建築様式を取り入れて、沖縄の上層農家の原型となっているようです。門扉は無く、「ヒンプン(顔隠し塀)」と呼ばれる豊かな表情をした石積み塀の存在がユニークです。道路側からのプライバシーの保護と悪霊払いの意味もあるのだとか。アプローチ周りと中庭を仕切って、絶妙な奥行き感が与えられています。赤瓦の屋根と深い軒、内部は各室を建具で多く仕切られ開放的。この日も厳しい日差しを防いで、心地よい風の流れが生まれていました。


 「ヒンプン」はここにも。内井昭蔵(1933~2002)による、『浦添市立図書館』(1984)です。ヒンプンの内側も見たかったのですが、生憎当日は休館日でした。

 

2012年10月1日

都市環境施設でも見せた巨匠の底力/広島市中工場(広島県)











 115万人の人口を抱える広島市のゴミ処理施設、『広島市環境局中工場』(2004)。平和記念公園から続く道を海へ向かうとその正面に、アルミとガラスで構成された端正な姿で現れます。大きなトンネルが建物を貫通していて、市街地と広島湾がつながれています。ここのガラス張りのトンネルは見学者用通路になっていて、ゴミ処理の巨大なプラントが立ち並ぶ様子が楽しめます。
設計は美術館建築の巨匠、谷口吉生(1937~)。美しいプロポーションとディテールにこだわって、完璧な”都市環境ミュージアム”となっていました。




 「中工場」を見た後、ちょっと寄り道をしました。地元企業のお好み焼きミュージアム 『Wood Egg』(2008)を見たかったからです。当然全館がお好み焼き一色。木製ルーバーを使った卵の形態がユニークです。設計は三分一博志(1968~)。関係した人達のお好み焼き愛が伝わる、微笑ましくまとめられた秀作でした。広島市西区にあって、見学には予約が必要です。