2012年1月30日

高崎にモダニズムの真髄が/群馬音楽センターと旧井上邸(群馬県)

 群馬、高崎市に建つ『群馬音楽センター』(1961)は、鉄筋コンクリートによる大空間実現のため、折版構造が採用されています。深い陰影を湛えて、完成からまもなく50年、荒々しいながらもなぜかコンクリート打放し面が、ここでは表情がやさしいのです。空間が年齢を越えて生き生きとしていました。設計者のA.レーモンド(1888~1976)は、チェコで生まれたアメリカ人です。戦前と、戦後再来日して日本の建築界に大きな足跡をのこしています。同時に彼に関しては、先の大戦が生んだ、簡単に語ることのできない評価もありますが‥‥。

 もう一つ、JR高崎駅からほど近いところに旧井上邸(高崎哲学堂)があります。ゼネコン井上工業社長・井上房一郎の住居です。麻布にあったレーモンド邸に惚れこんだ井上が、許可をもらってそっくりコピーしたものなのです。経済性が考慮されたのでしょうか、丸太と合板が多用された、一見質素な造りになっています。本当の豊かさとは何かを考えさせられた作品です。

2012年1月23日

形態は機能のみに従ってはいない/シュテーデルホーフェン駅(スイス)

 スイス、チューリッヒにある『シュテーデルホーフェン駅』(1990)。設計者S.カラトラヴァ(1951~)にとって必然性があるのでしょう、まるで恐竜の骨格のような形態です。加えて構造の合理性も良く表れているようにも見えます。駅は大きな弧を描いて、同一レベルで街へ開放されています。プラットフォームは街路といったところでしょうか。改札もありません。スティールとガラスの組み合わせで明るく、巧みに仕上がっています。

 「ルツェルン文化会議センター」と敷地を接して『ルツェルン駅(増築)』(1989)はあります。S.カラトラヴァ(1951~)は、ここでも鉄骨や前面のコンクリート柱などに有機的な形を与え構造体をはっきり見せたうえで、ダイナミックな外観と明るい大空間を構成していました。