ここはフランスの東部、マリア信仰の厚い巡礼地です。幹線道路を車で走り、『ロンシャン巡礼教会堂』(1955)に近づくにつれて遠く丘の上に、ポツンと白く現れ、いやが上にも期待が高まります。周囲の芝生から立ち上がる、粗い打ち放し面に塗装された壁と、空に浮く屋根は思っていた以上に大きく迫ってきます。その自由で彫塑的な形は、見る位置を変える都度、新鮮な表情で表れます。内部は暗い! 祈ることだけの空間だとしても本当に暗い。ぶ厚い壁に穿たれた大小いくつもの開口は、色とりどりの光りが射し込み量感を強調して、暗さのなかに千金の重みをもつかのようです。奔放な表現と構造を持ったこの教会堂は、画家にもなりたかった建築家ル・コルビュジエ(1887~1965)の金字塔だ、と断言できます。
0 件のコメント:
コメントを投稿