2011年10月24日

無何有郷(むかうのさと)の実現も半分/アルケスナンの王立製塩所(フランス)

 国際音楽祭の町ブザンソンからバスで2時間、アルケスナンに到着です。世界遺産に登録(1982)されている、『アルケスナンの王立製塩所』(1979)は、当時の売れっ子建築家であり、さらに王室建築家まで登りつめたC.N.ルドゥー(1736~1806)の設計です。広大な芝生の広場を持った半円形プランの製塩工場は、ルドゥーが目指した理想都市の中央に据えられています。各所に見られる塩のモチーフや、円形と四角形を交互に組み合わせた柱など見るべきデザインも数多く、未完成の建築でありながら楽しめます。
 ルドゥーはこの仕事の後、フランス大革命で投獄され、生涯を終えたのでした。

2011年10月17日

京都の庭に見る永遠のモダン/重森三玲の作庭(京都府 他)

 作庭家 重森三玲(1898~1975)の庭が見たくなり、山妻を伴い京都へ。「東福寺・八相庭」で高い評価を得た後、各地に作品を残している三玲の庭の特徴は、人から神が宿るとまで言われ、自身は力強い岩島石を神として組んだモダンな地割の枯山水にあります。東福寺(方丈庭園→龍吟庵→光明院)→光清寺→西山邸→雪舟寺→岸和田城と巡ってみると、三玲が宣言した「庭園は芸術である」ということがわかるのでした。
 藤森は、イサム・ノグチ(1904~1988)と深い親交があり、請われて石材についての助言を多く与えていたと言われています。

2011年10月10日

湖岸に光るガラス箱/ブレゲンツ美術館(オーストリア)

 スイスからオーストリアへ。西端に位置する町ブレゲンツは、湖と旧市街が美しい。ここに今、世界中からラブコールが送られている建築家 P.ズントー(1943~)設計の『ブレゲンツ美術館』(1997)があります。フロストガラスを纏って、柔らかな陰影を漂わせて、ハッとするほどの美しさです。しかし、冷静になりましょう。ここで建築家ならだれもが?となります。なぜか。一般に美術館の展示室は、均一な照度が求められ、外光は敬遠されるのが普通だからです。4層の美術館で、ズントーはどのように解決したのか。それは、一層ごとに2メートル以上の天井懐にハイサイドライトの形で光を採り入れました。天井がトップライトとなり、均一で柔かい光が各階の展示室にあふれるように。一階以外の展示室はコンクリートの壁で囲ったため、展示上の不具合もありません。ミュージアム棟と分離されたオフィス棟は、黒いフレーム構造で隣接し、足元の広場にはオープンカフェで憩う人達でいっぱいでした。

2011年10月3日

建築家カップルの自信作か/ヴィンタートゥーア美術館(スイス)

 近年、国際的なコンペに積極的に参加をして実績が目ざましい、建築家カップルであるギゴン&ゴヤー(1959~、1958~)の設計による『ヴィンタートゥーア美術館』(1995)です。スイス、チューリヒに近い小都市にあります。四周がガラスパネルの上に鋸形の屋根(トップライト)が載る、外観が印象的です。断熱効果を持っているという、ガラスパネルとコンクリートが美しく巧みに処理されていて見事です。二人のあふれる程の才能を体感できる嬉しい作品でした。