2011年7月25日

街の景観と建築の関係への回答/MIMOCA(香川県)



 約10年ぶりに『丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(MIMOCA)』(1991)との、嬉しい再会です。設計者の谷口吉生(1937~)は、「建築は出しゃばるな」、「敷地を徹底的に読み取れ」と言っています。この場合はJR丸亀駅前という、どちらかといえば不利な風景に、今もスマートに馴染んでいました。完成から20年を経て、側面壁に使用されている天然スレートは石目模様が美しく現れていて、よい年齢のとり方をしていたのは嬉しいことでした。MIMOCAの人たちから呼ばれている「大階段」からのフレームが、駅周辺の風景をバランスよく切り取っている様子はここのハイライトと言えるでしょう。

2011年7月18日

絵本と同じ、やさしさ/安曇野ちひろ美術館(長野県)

 JRで信濃松川駅下車。駅からはタクシーですぐ。北アルプス連峰も心地よい空気と一緒に、雄大な姿で迎えてくれました。『安曇野ちひろ美術館』(2001)は村営公園の中。夏には前庭の水場が、子供たちで賑うと聞きました。建物に向かって進むと、予め知らされていたことですが、ブラボーです。 ファサードを形造っている切妻屋根の形が背後の山の形とピタリ一致 ! これは設計者の内藤廣(1950~)が北アルプスの山々へ敬意をはらったことの表れなのでしょう。さて、内部はどうか。”天井の内藤”の面目躍如、例えば木の舟底天井の表情などが、床の板貼りとあわせ、とても柔らかい。ここには岩崎ちひろ(1918~1974)が描き続けたかっただろう、やさしさの全てがありました。

※ 今朝、なでしこJAPANが世界一に! 全員の結束が生んだ快挙です。大震災の被災者の方々と一緒に喜びを分かち合えることが嬉しいですね。今の日本、今度は政治家達が今まで以上に頑張る番です。私たちも知恵を出します。

2011年7月11日

ヒューマニティーの追求/碌山美術館(長野県)

 安曇野の入り口JR穂高駅から、キャリーバッグを引き歩いて10分足らず。一見、ロマネスクの教会の佇まいで、『碌山美術館』はありました。”喜びの欧州大陸旅行”を経て、当時のモダニズムの潮流から距離を置いて活動した建築家、今井兼次(1895~1987)の63歳の時の作品です。当時は、多くの建築家達がコンクリート打ち放しに血道をあげている時代、例えば香川県庁舎(丹下健三)と同じ年の建設と知って、ここで使われている赤い煉瓦の表情がさらに優しく感じたのでした。自らがカトリック教徒だった今井の人間性を、強く感じられる作品です。

2011年7月4日

究極の水上都市を歩きたい/ベネツィア(イタリア)

 前回と前々回分が重いテーマでしたので、少し息抜きをさせてください。
『ベネツィア』です。だれもがご存知、この町はラグーナ上の118の浮き島からなるイタリアの水上都市です。その日は空港から夕景の中を水上バスで入りました。大運河(カナル・グランデ)がメイン・ストリートです。水路の裏側は、路地がまるで迷路のように走ります。ここでは迷いながら路地を歩き回る方が、面白いように思います。建築も、パラーディオ、スカルパの秀作など、見るべき作品には事欠きません。さあ、地図と歩数計(?)を持って、Let’s路地へ!!