2011年3月22日

崇高な陰翳に魅せられて/聖ベネディクト教会(スイス)

 スイス・スンヴィッツ村へのアクセスは簡単ではありません。何せ、バスの走行が難儀するほどの深い山里ですから。このような厳しいロケーションの中に『聖ベネディクト教会』(1989)は、息を潜めてひっそりと佇みます。木造の教会は外壁にシングルを纏い、平面形が涙の形または木の葉のようにも見えます。ディテールも秀逸です。床面と壁面が縁が切れていて、床面が浮かんでいるように見えるのも一例です。周囲のトップサイドライトからの光は、細い柱に当たって柔らかく拡散します。これほど崇高な建築を作ったP.ズントー(1943~)の魔法は「陰翳」でした。
 写真の6番目は、雪崩によって押し流された、かつて別の位置にあった教会の一部だそうなのですが‥‥?

2011年3月21日

渓谷で静寂と対峙/ヴァルスの温泉施設(スイス)

 「陰翳礼賛」、谷崎潤一郎の感性を理解しているというスイスの建築家、P.ズントー(1943~)の設計。『ヴァルスの温泉施設』(1997)はスイス山中の奥深い小村に建ち、ここには光と影、静寂があります。外と内の大部分に、地元 ヴァルス産の濃灰色の石材が積層されて使われています。ちょうど、現代の石窟に入り込んだような気分と言えるでしょうか。浴場から屋上テラスに出ると、渓谷の澄んだ空気に抱かれて気分爽快です。宿泊もできました。夢のようなリゾート体験でした。
蛇足ですが、周りにはセレブリティーがいっぱい。自身のようにゆるんだ体形での施設利用は、アズマシクない(北海道の方言で、居心地が悪いの意)ことにもなります。ご自愛を・・・・。

※ 東日本大震災の復興にがんばる被災者と、それを応援される方々に一日でも早く明るい笑顔が戻りますように、心から祈りあげます。

2011年3月15日

カミノ・レアル ホテルの明るい「地域主義」色(メキシコ)

 R.レゴレッタ(1931~2011)が、メキシコの村や町から、さらに歴史から学んだという、このような大胆な造形と色彩、そして光にあふれた『カミノ・レアル ホテル』(1968)は、彼が35歳の時の作品です。さながら、現代アートのような趣のホテルは、メキシコオリンピック直前の完成時から現在まで、高級ホテルとして内外から認知されています。クライアントとの方針の違いを乗り越えてのものです。

※ 東日本大震災に大変驚きました。被災された東北の人達が、必ずこの災害から立ち直れますように。がんばろう東北、がんばろう日本!  

2011年3月7日

R.レゴレッタのオフィス訪問(メキシコ)

 R.レゴレッタ(1931~2011)はメキシコの伝統的なものを愛しながら、抽象という近代建築の手法をとり入れた作品を作り続けている建築家といわれます。ここに掲げた『レゴレッタのオフィス』の写真で見ていただくのが、その一端です。彼のすべての作品において特徴的な光りや色彩、水までも使い、たいへん魅力的な空間を作り出しています。オフィスを訪ねた際には、柔和な印象のレゴレッタ本人にも短時間、接することができました。